『I'M FLASH!』ユナイテッドシネマキャナルシティ



訓練所から、キャナルシティは徒歩で五分もかからない場所にあります。上映スケジュールをみていたら、観に行けないのでは…と半ば諦めていたけれど、金曜日の訓練所の帰りにキャナル寄って観てきました!


新興宗教の教祖ルイ(藤原竜也)がバーで出会った女性・流美(水原希子)と飲酒運転のドライブをして事故を起こすところから物語は始まる。その事故のニュースが流れているテレビを見ながら、食事をする新野(松田龍平)。新野は事故の直後にルイのボディガードになるのだけれど、とある不幸からルイは新野に追われることになる。ルイと新野を含むボディガードの微妙な心理の移り変わりと人間模様が、ルイが教祖である『ライフイズビューティフル』の教典とルイの心情・新野の心情のモノローグと共に語られていく。そしてそれと平行して事故に巻き込まれて昏睡状態になった流美がルイに近づいた目的と、ドライブの車中の様子が映し出される。そして、ルイと新野は海で一騎打ちとなる。


こういったストーリーです。
この映画の舞台は沖縄で、美しい海のシーンが多く、藤原竜也扮するルイは素潜りを趣味としているので海中のシーンも見所でした。
なんといっても、この映画の映像の美しさは、所謂沖縄の健康的なさんさんと輝く太陽の光を受けた明るさの元に撮影されていないところです。健康的とは正反対の、物憂げな光の中でストーリーが展開していきます。
美しい映像とは裏腹に殺伐とした人間関係。ルイの空虚な心、そしてギリギリまで追い詰められた心理が痛い程伝わってくる。


生きることは何か?生きていて何を感じるか?人生を明るく主人公として生きるのか、傍観者として見送るのか。楽しい人生は必要か?
こんなことを、ルイと新野のやり取りから考えさせられます。


豊田利晃監督の作品は松田龍平主演の『青い春』以来、久しぶりに観たのですが、『青い春』の終わり方は救いがないように感じたのを覚えています。
しかし、今回の映画はラストに死者が出るにも限らず、映画の中で語られていた「俺の中で生きろ」というルイの言葉を体現した結末になっていました。
死んでも生き続ける、憎しみも苦しみもあるのではなく、必要とされているのでもなく、ただ他者の中で生きていく。そんなイメージをうけた結末でした。


宗教にすがって生きていく心。それを否定もせず、そして肯定もせず。
人は何かしらの出来事があって心が迷うとすがりたいものが出来るんだな、とも思わせる結末でもあったかな。


どこまでも情けなくて辛い人間臭い感覚をビンビン感じる映画。なのに観終わったら、世の中が愛おしくなった。